行政不服審査の審査請求をすると、その行政の行為は一旦停止するのでしょうか?例えば、入所していた学童保育の入所の不許可が出て、あなたが審査請求をすると、その「不許可」は停止されて、子どもは学童保育に継続して入所できるのでしょうか?
わかりやすく解説します。
審査請求をしても停止しないのが原則(執行不停止)
行政庁の行為については、審査請求をしたとしても、その効力は原則停止しません。審査請求をしても、行政行為の効力は引き続き有効です。つまり、学童保育の入所の不許可は、審査請求後も有効で、不許可である以上、子どもは学童保育を利用できない、ということになります。これを「執行不停止の原則」といいます。
【具体例】
例えば、あなたが建築物を建築し、市長がその建物は違法建築物だからといって建物の除却命令(取り壊しの命令)をしました。あなたが、除却命令に不服があるとして、審査請求をしたとしても、除却命令の効力は有効なので、あなたは建物を除却する(取り壊す)義務があるということになります。
執行停止の申し立て
では、どうしたらよいのでしょうか。
審査請求自体は、対象となった処分の効力を停止させるものではありません。受けた処分の効力を停止させるためには、審査請求にあわせて、行政に対して「執行停止の申し立て」をする必要があります。
執行停止の申立書の書式については、特に決まっていませんが、例えば審査請求書に執行停止を求める旨とその理由を記載するなどの方法が考えられます。
執行停止の申立てをすると停止するの?
執行停止の申立てをすると、停止するのでしょうか?残念ながら、自動的に停止されることはありません。行政が執行停止を行うかどうかの判断は以下のいずれかの要件に当てはまる必要性があります。
①権利利益の救済の必要性、審査請求を認容する可能性等を総合的に判断して執行停止の必要があるか
②原状回復が困難となるなど重大な損害を避けるため緊急の必要があるか
つまり、
①あなたを救済する必要性とあなたがした審査請求を認める可能性を行政が考える
②原状回復が困難となるなど重大な損害を避けるため緊急の必要があるがどうかを行政が考える
これらを行政が考えて判断する、ということになります。
難しい要件でわかりにくく、事例もあまりないので、執行停止の申立てをしてみて、あとはどう判断されるか待つしかない、というのが現状です。
まとめ
審査請求をした行政の行為を停止させたい場合は、執行停止の申立てをする必要があります。執行停止の申立ては審査請求書に執行停止を求める旨とその理由を記載することでOKです。ただ、停止が認められるかどうかは行政の判断となります。
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